脳卒中急性期における血圧管理 パート1:血圧を変更するために計画された臨床試験の評価

Blood pressure management in acute stroke. Part I: assessment of trials designed to alter blood pressure

Blood pressure in Acute Stroke Collaboration (BASC)

最終更新日:04/05/1997


目的:(i)血圧を慎重に下降,上昇させることが,早期または晩発性の死亡や,機能的依存性を減少させる点で安全かつ有効であるか否か,(ii)脳卒中急性期における様々な血管作用薬の効果を判定する.

検索方法:コクラン脳卒中レビューグループによる検索方法の他に,MEDLINE,EMBASE,ISI,Ottawa Stroke Trials Registry,脳卒中急性期における高血圧症のレビュー,この分野の研究者や製薬会社による考察を加えて検索した.

選択基準:ランダム比較試験であり,急性虚血性または出血性脳卒中から二週間内の患者の血圧の慎重な調節を目的としたものを発表,未発表に関わらず研究の終了したもの全て選択した.

データ収集と解析:アウトカム:収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),心拍数(HR),患者致死率,神経学的変化,機能障害,脳卒中再発率,生活の質,退院状況,入院期間.

主な結果:133名の患者に関する3つの研究が確認された.さらに2つの研究が進行中である.次の血管拡張薬の研究が行われた.ニモジピン(カルシウムチャンネル遮断薬,CCB,n=66),ニカルジピン(a CCB, n=5), カプトプリル (アンギオテンシン変換酵素阻害薬,n=3), クロニジン(α-アドレナリン作動薬, n=2)そして57名がプラセボに当てられた.血圧を上昇させる研究は確認されなかった.CCBは経口投与で血圧と心拍数を低下させた.SBP,DBP,HRはコントロールグループに対して各々,48時間で10.9 mmHg (95%信頼区間,CI,2〜19.7),9.5 mmHg (95%信頼区間,CI,4.0〜15.1),4.7/min(95%信頼区間,CI,0.1〜9.2)低下した.ニモジピンは濃度依存的にSBP,DBPを低下させた.CCB以外の薬については,血行動態に対する効果を評価するにはデータが不十分であった.臨床的なアウトカムにおいても,血圧の変化とアウトカムの間に関連性があると分析するにはデータが不十分であった.

結論:脳卒中急性期患者の臨床的アウトカムに対する,血圧変化の効果を評価する目的で行われた,血圧を調節する試験では,患者数が不十分であった.このレビューシリーズのパート2では,血管作用薬が用いられた脳卒中急性期の全試験について,評価を行う予定である.CCBの経口投与は,脳卒中発症後の血圧を著しく低下させた.脳卒中急性期において,血管作用薬を日常的に用いることによる利益と危険性のバランスははっきりしていない.


Citation: Blood pressure in Acute Stroke Collaboration (BASC). Blood pressure management in acute stroke. Part I: assessment of trials designed to alter blood pressure. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:秋山香乃/和座一弘,内堀充敏)