精神分裂病と学習障害を合併した患者に対する抗精神薬投与

Antipsychotic medication for those with both schizophrenia and learning disability

Duggan L, Brylewski J

最終更新日:24/08/1998


目的:同時に学習障害と精神分裂病と診断された患者の治療に対する抗精神薬投与の有効性を検討する.

検索方法:Biological Abstracts,コクラン精神分裂病グループの比較臨床試験特別レジスター,コクラン・ライブラリー, EMBASE, PsycLIT, MEDLINEの電子検索をおこなった.未発表のデータが製薬会社から取り寄せられた.このような方法で同定された報告から,二人の著者が独立にメタ・アナリシスの対象となる研究を選び出した.

選択基準:1.プラセボと抗精神薬を投与量に関わらず,一カ月より長く投与したすべてのランダム化比較試験.

2.学習障害と精神分裂病を合併した18歳以上の患者すべて.学習障害はIQ70以下と定義された.いかなる精神分裂病の診断方法も許容された.

データ収集と解析:二人のレビュアーが互いに独立にデータを選択して抽出しようと試みた.包含基準に合致する研究が1つだけ見つかったが,それについて独立に抽出することは不可能であった.

主な結果:検索によって唯一つの関連するランダム化比較試験が見い出された[Foote 1958].この研究では,精神分裂病と学習障害を合併した4例の患者が含まれていたが,2人の患者の結果しか利用できなかった.他の2人の患者が割付けられたグループは明確ではなかった.データを示すためには,この2人の患者についてあまりにも多くの仮説を立てなければならないし,いかなる結果が得られたとしても十分な情報を含まず,潜在的に誤解を招きやすいものであった.

結論:記述された方法を使った場合,学習障害と精神分裂病を合併した患者に対して抗精神薬の使用のガイドラインとなるようなエビデンスは見出されなかった.

ランダム化比較試験が早急に実施される必要があるが,それが行われるまでは,実地の診療は学習障害のない分裂病患者を対象とした臨床試験からのエビデンスによって導かれ続けるであろう.


Citation: Duggan L, Brylewski J. Antipsychotic medication for those with both schizophrenia and learning disability. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:福井直仁/中野有美)