高齢者の降圧薬による治療 

Antihypertensive drug therapy in the elderly

Mulrow C, Lau J, Cornell J, Brand M

最終更新日:01/12/1997


目的:降圧薬治療の長期的効果を高齢者の罹患率と死亡率において定量的に示すこと.試験参加者の病気にかかった危険プロフィールの特徴を捉えること.

検索方法:WHO-ISH共同登録の電子検索(1997年8月),コクラン・ライブラリー(1997年,第1版),MEDLINE(1996年から1997年4月),2つの日本のデータベース(1973年から1995年),レビュー,臨床試験,最近の10件の出版されたメタ・アナリシスから得られた参考文献,専門家.

選択基準:降圧薬による治療を評価し,罹患率と死亡率のデータを示している,高血圧の高齢者(少なくとも60歳)を対象とした, 少なくとも1年以上行われた,ランダム化比較試験.

データ収集と解析:少なくとも2人の独立した評価者が,罹患率や死亡率の結果や臨床試験の特性についてのデータを要約した.次のアウトカムが評価された.すなわち,全死亡率,虚血性心疾患(CHD)による死亡率,虚血性心疾患の罹患率と死亡率の両方,脳血管疾患による死亡率,脳血管疾患による罹患率と死亡率の両方,心血管疾患の死亡率,心血管疾患の罹患率と死亡率の両方,治療の副作用による脱落の評価をした.

主な結果:15の臨床試験で21,908人の高齢者の対象が同定された.心血管リスクファクター,心血管疾患,それらの病気類似の状態の平均罹患率は試験参加者のほうが高齢者高血圧者の一般集団よりも低かった.多くの被験者は60歳から80歳だった.多くの試験は産業の発達した西洋諸国で行われ,利尿剤とβ遮断薬により治療を評価していた.約5年以上の追跡で1000人あたりの被験者のイベントの発生率をみると降圧剤が有効ということを示している.心血管疾患の有病率や死亡率は177から126の結果に減少した.(差の95%信頼区間 31〜73).心血管疾患による死亡率は69から50に減少した.(差の95%信頼区間 9〜31).全死亡率は129から111に減少した.(差の95%信頼区間 4〜28).収縮期高血圧症に限った3つの試験のデータは有意な効果を示した.つまり,約5年以上の心血管疾患による罹患率と死亡率は1000人あたり157人から104人へと減少した(差の95%信頼区間 12〜89).二次的に副作用により脱落した被験者の数はしばしば報告されていなかった.このデータを報告した4つの試験では,脱落率は治療群,コントロール群間で有意差がないものから,治療の副作用により4人に1人が脱落したというものまでさまざまであった.

結論:ランダム化比較試験は,高血圧のある健康な老人を治療することは高い効果があることを確立した.低用量の利尿剤かβ遮断薬での治療の効果は,拡張期高血圧あるいは収縮期高血圧どちらの場合でも60代から70代の人々にとって明らかである.患者の危険因子,すでに存在する心血管疾患,それらの病気類似の状態に基づいた別々の治療の効果は出版された試験のデータからは確立できなかった.


Citation: Mulrow C, Lau J, Cornell J, Brand M. Antihypertensive drug therapy in the elderly. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:矢野利枝/八森 淳,石川鎮清)