癌患者に対してルーチンに行われる抗真菌治療

Routine antifungal therapy in cancer patients

Gotzsche PC, Johansen HK

最終更新日:23/10/1997


目的:好中球減少症を伴った癌患者へ,予防的・経験的に抗真菌剤を投与することで,その罹患率や死亡率を減少させることができるかを研究する.

検索方法:包括的な検索方法を用いて,MEDLINEの1966年から1997年9月までの文献を検索した.学会抄録と企業への連絡から未発表の試験も集めた.

選択基準:プラセボあるいは未治療な場合を比較対照群とした,アムホテリシンB,AmBisome,フルコナゾール,ケトコナゾール,ミコナゾール,イトラコナゾールのランダム化比較試験.

データ収集と解析:(1)死亡率 (2)血液培養陽性,食道カンジダ症,肺,深部組織を含めた深在性真菌感染症 (3)集落形成

主な結果:ランダム化された2,912名の患者からなる,25の試験が合致した.総死者数は444名であった.予防的・経験的な抗真菌治療を行った群で,死亡率に有効性は認められなかった(OR 0.92,95%CI 0.75〜1.14).アムホテリシンは死亡率を有意に減少させた(OR 0.92 95%CI 0.37〜0.93)が,この研究は小規模であり,死者数の差はわずか15名であった.抗真菌治療は深在性真菌感染症の発症率を有意に低下させ(OR 0.49,95%CI 0.36〜0.66),菌の集落形成や追加の抗真菌治療の実施をも減少させた.生存患者において,真菌の深在性感染症を1例予防するためには,59人の患者(95%CI 37-131人の患者)を治療を施行する必要があることがわかった.

結論:死亡率について納得のいく有効性は見つけられず,真菌深在性感染に関する結果が少々見つけられたにすぎない.それゆえに,好中球減少症を伴った癌患者に対して,抗真菌剤を予防的・経験的に用いる治療が広く受け入れられていることに疑問を抱き,そして,抗真菌剤の投与は感染が明らかな患者かランダム化比較試験に参加する患者に限定されることを示唆している.アムホテリシンBの大規模で厳密なプラセボとの比較試験が行われるべきである.


Citation: Gotzsche PC, Johansen HK. Routine antifungal therapy in cancer patients. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:矢野 礼/吉村 学,鶴岡浩樹)