急性虚血性脳卒中と推定される患者に対する対照群と比較した抗凝固療法

Anticoagulant therapy compared to control in patients with acute presumed ischaemic stroke

Counsell C, Sandercock P

最終更新日:22/04/1996


目的:急性虚血性脳卒中と推定,もしくはそれと診断された場合の初期治療において抗凝固療法が,効果的で安全かどうか判定する.

検索方法:コクラン脳卒中レビューグループの検索方法と,抗凝固薬を販売するいくつかの製薬会社との個人的接触.

選択基準:交絡のない,完全なランダム化比較試験で,急性虚血性脳卒中と推定,もしくはそれと診断された患者に対して,早期(脳卒中発症2週間以内に開始)の抗凝固療法の価値を,コントロール群と比較しているものを適格とした.

データ収集と解析:2人の人間がこの調査に含まれる試験を独立で選択した.以下のアウトカム(静脈血栓症,肺塞栓症,死亡数(すべての原因によるものと血管性によるもの),頭蓋内の出血,頭蓋外の大出血,再発性の脳卒中,心筋梗塞,生存できる能力障害)の患者の数が検索され,データは,ダブルチェックされた.すべての解析は,可能な限り"intention-to-treat"で行なった.

主な結果:150の研究(1599人の患者)を対象とした.コントロールと比較した療法は:標準非分画性のヘパリン(7つの研究),低分子量ヘパリン(4つの研究),ヘパリノイド(2つの研究),経口抗凝固薬(2つの研究). 抗凝固療法に割付けられた群は,非常に有意に,80%(SD 8, 2P<0.00001)も,静脈血栓症の発生のオッズ比(15%抗凝固療法対46%コントロール)を減少させている.また抗凝固療法グループ(OR 0.57, 95%CI0.36-0.86) の経過観察の終わりにおいて,死亡や依存性の危険性の,期待できる減少があるが,これは限られたデータに基づくものである.初期または後期の死亡頻度,肺塞栓症,頭蓋内出血,頭蓋外出血または,再発性の脳卒中において抗凝固療法に割り当てられた患者とコントロールの間に,統計的な有意差はなかったが,人数が少なくそのため信頼区間は広かった.抗凝固療法における,臨床的に重大な利点や危険は,確実には除外できなかったし,初期の危険の可能性があった.

結論:虚血性の脳卒中後の初期の抗凝固療法開始は,静脈血栓症のかなりの減少と関連し,長期における不運な結果(死亡や依存性)のまずまずの減少がある.しかしながら初期の抗凝固療法(静脈血栓塞栓症に対する予防的な治療を含む)による危険と利点のバランスは残念ながら,とりわけ重大な臨床結果(死亡や依存性)との関連がはっきりしない.抗凝固療法とコントロールとの比較の1万人の患者による大規模にランダム化した研究が必要とされる.このような研究が最近完了しつつあり,このレビューに含まれるであろう.


Citation: Counsell C, Sandercock P. Anticoagulant therapy compared to control in patients with acute presumed ischaemic stroke. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:岡野愛子/和座一弘,内堀充敏)