咽頭痛の症状と合併症に対する抗生物質

Antibiotics for the symptoms and complications of sore throat

Del Mar, C.B. Glasziou, P.P

最終更新日:07/05/1998


目的:咽喉痛の管理における抗生物質使用の利益と害を評価する.

検索方法:1945年から1996年までの文献を系統的に選別した.用いたのは,1966年以降はMEDLINEのオンライン検索(使ったキーワードは"pharyngitis","sore throat","tonsillitis"),コクラン・ライブラリー(1997年 issue 4),コクランのハンドサーチ試験集,および得られた論文の参考文献の項である.得られた論文の要約を読み,どの研究が試験かを決めた.

選択基準:比較表に含んだ研究は,抗生物質を対照と比較した試験で,典型的な症状(咽頭痛,頭痛または発熱),あるいは急性咽頭痛の合併症(化膿性あるいは非化膿性)を測定しているものである.

データ収集と解析:RevMan 3.0

主な結果:合計10484の咽喉痛の症例が研究された.1.非化膿性の合併症(メタビュー参照);抗生物質によって急性糸球体腎炎を防止できる傾向があったが,この効果をが確実になるには不十分な登録症例数であった.いくつかの研究では急性リウマチ熱に対する抗生物質の有益性を見いだしており,その合併症を3分の1以下に減少させた(相対リスク=0.28; 95%CI=0.19〜0.40).2.化膿性合併症(メタビュー参照);抗生物質は急性中耳炎の発症率をプラセボ群の約4分の1に減少させ(相対リスク=0.23; 95%CI=0.12〜0.45),急性副鼻腔炎の発症率をプラセボ群の約3分の1に減少させた(相対リスク=0.33; 95%CI=0.07〜1.65).化膿性扁桃炎の発症率もまたプラセボに比し減少した(相対リスク=0.19; 95%CI=0.08〜0.47)3.症状(メタビュー参照);頭痛,咽頭痛あるいは発熱の症状は抗生物質によって約半分に減少した.このことが明らかになるには最大3日半を要した(そのとき未治療患者の約50%の症状が安定した).治療患者と未治療患者の約90%が1週間までに症状がなくなった.

結論:抗生物質は咽喉痛の治療について相対的利益をもたらす.しかしながら,絶対的利益の臨床的意義は大きくない.現代の欧米社会ではリウマチ熱の発症率が非常に低いので,予防的に抗生物質を日常的に使うことを正当化できない.咽喉痛の患者を化膿性合併症から抗生物質によって守るには,何の利益も得ない多くの人を抗生物質で治療しなければならない.急性中耳炎の1症例を予防するためには,咽頭痛のある30人の小児,145人の成人を抗生物質で治療しなければならない.抗生物質は症状の持続時間を短縮するが,最大の効果がある時でも平均してたかが約半日,全体としては8時間程度である.


Citation: Del Mar, C.B. Glasziou, P.P. Antibiotics for the symptoms and complications of sore throat. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:水谷武夫/浅井泰博)