ICUで治療している成人患者における予防的抗生物質投与

Antibiotic prophylaxis in adult patients treated in Intensive Care Units

Liberati A, D'Amico R, Pifferi S, Leonetti C, Torri V, Brazzi L, Tinazzi A

最終更新日:06/05/1997


目的:集中治療室(ICU)の無選別の成人において,予防的抗生物質投与が呼吸器感染症(RTI)と全死亡率を減少させるかどうかを明らかにする.

検索方法:MEDLINEに収載されている査読がある雑誌の系統的検索,関連する学会抄録の検討,研究者との個別の接触.

選択基準:無選別の成人ICU患者に対して呼吸器感染症の発症と死亡率を下げるために使われたいろいろな抗生剤予防投与法を比較したもので,出版の有無に関わらないすべてのランダム化比較試験(RCTs).

データ収集と解析:このレビューに適格な32のランダム化比較試験から,出版された報告をもとにデータを抽出し,その後,29研究の研究者からの情報で補足した.残りの3つのランダム化比較試験については出版された報告のみからデータが利用可能であった.それぞれの試験に対し以下の項目が調査された.a)ランダム化の方法,b)盲検法の使用,c)ランダム化の対象患者数,d)呼吸器感染症患者数,e)死亡者数,f)結果の解析から除外した患者数,g)除外された患者内での呼吸器感染症患者数と死亡者数.ランダム化比較試験を,a)予防投与を行わない群に対し局所と全身的抗生剤の併用効果を調べる15の試験,b)局所的殺菌処置の治療効果を調べる17の試験,という重要であるが,あわせて検討することができない2種類の試験に分け,その後に集計し,プールした結果を評価した.RTIと死亡率の粗比率は全体的治療効果を計算するために使われた.我々はまた,一人の感染や死亡を阻止するために治療を要したICUの患者数も調べた.

主な結果:5639人を含む32のランダム化比較試験が検証された.局所的,全身的な抗生剤の併用効果を調べた15のランダム化比較試験(3273人の患者を含む)をプールして解析した結果では,呼吸器感染症(OR 0.36, 95%CI 0.30〜0.43)と全死亡率(OR 0.80, 95%CI 0.68〜0.93)の両方を有意に低下させることが示された.一人の感染や死亡を阻止するためには,それぞれ5人と23人の患者の治療が必要であった.局所的殺菌法の併用効果 についてのデータを17の利用可能な試験(2366人の患者を含む)からプールすると,呼吸器感染症は著明な減少があったが(OR 0.57, 95%CI 0.46〜0.69),全死亡については効果がなかった(OR 1.01, 95%CI 0.84〜1.22).

結論:15年の臨床研究の後,この32のランダム化比較試験のメタ・アナリシスは,局所及び全身的抗生物質併用による予防的な抗生物質の投与法はICU患者の呼吸器感染症(RTI)と全死亡率を低下させることを示しており,これは統計学的にも有意であり,個人にとっても価値あるものである.集中治療者は治療方針を決めるときに,個人的意見に加えて,このエビデンスを考慮に入れるべきである.


Citation: Liberati A, D'Amico R, Pifferi S, Leonetti C, Torri V, Brazzi L, Tinazzi A. Antibiotic prophylaxis in adult patients treated in Intensive Care Units. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:福田泰代/八森 淳,橋本 淳)