分娩後の抗D抗体予防

Anti-Rh-D prophylaxis postpartum

Crowther C, Middleton P

最終更新日:24/02/1997


目的:Rh陽性の児を分娩した抗D抗体を持っていないRh陰性の母親に,分娩後に予防的に抗D免疫グロブリンを投与することの効果を評価すること.

検索方法:このレビューは全体としてコクラン妊娠と出産グループが開発した検索方法によった.さらなる情報はレビューグループの詳細をみよ.関連した研究は,MEDLINEやコクラン比較臨床試験レジスター,研究論文や総説の文献リストによって検索された,同グループの比較臨床試験特別レジスターより同定された.

選択基準:産後に抗D免疫グロブリンを予防的に投与された抗体を持っていないRh陰性婦人(とその児)の結果を,予防的に投与しなかった抗D抗体を持っていないRh陰性婦人(とその児)の結果を評価したデータをもつすべての出版された,または未出版や進行中のランダム化比較試験.考慮された主たる結果は,Rh免疫感作への伸展,治療に対する母体の関心や副作用,次回妊娠時の新生児罹病率であった.

データ収集と解析:組み込みや方法論的質の適合性は,各々の著者が各々の結果を考慮せずに,別々に評価した.データは2人の判定者によって別々に抽出され,二重にチェックして登録した.すべての適格な研究は初期解析によって組み込まれ,ABO不適合と量の影響についての評価をするためにあらかじめ決められた解析を行った.

主な結果:分娩後の抗D抗体予防をした群と予防なしとを比較した研究では分娩後6ヶ月で抗D抗体に感作された婦人は総じて少なかった.加えて抗D免疫グロブリンの投与は次回の妊娠でのRh免疫感作の発症率を減少させる.これらの治療による有用性は母児のABO型とは無関係であり,分娩後72時間以内に投与したときにみられる.比較して有用であった全ての量(抗D抗体200ugまたはそれ以上)で,分娩後6ヶ月の時点と次回妊娠中の感作のリスクが予防しないのに比べて減少した.量を比較したデータは抗D抗体50ugまでは200ugまでの多い量に比べて,次回妊娠中の感作のリスクが増加する.感作された数が少ないため,100ugの低量の抗D抗体が150ugの多い量に比べて投与後の効果がないことをしめす証拠はない.

結論:臨床的意義:Rh陽性の児やRh型を調べてない児を分娩したすべてRh陰性の婦人は,ABO型にかかわらず分娩後72時間以内に予防的に抗D免疫グロブリンをうけるべきである.研究の意義:分娩後の抗D予防の効果を確立するためのプラセボによるさらなる比較試験は行う理由がない.分娩後の予防勧めるために抗D抗体の至適投与量については明らかでないので,さらなる質のよい比較研究が適当だろう.胎児・母体出血の程度のスクリーニングと必要時に抗D抗体の追加投与とを組み合わせた抗D免疫グロブリンのさらに少量の投与は,抗D免疫グロブリンの大量投与と比較されるべきである.さらなる研究で,感作に対する婦人の姿勢や,次回妊娠時の児の健康状態,治療の副作用が評価されるべきである.


Citation: Crowther C, Middleton P. Anti-Rh-D prophylaxis postpartum. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:益田祐子/佐藤孝道)