目的:思春期から中高年層における個々の身体活動における足関節靭帯損傷や捻挫の予防法の有効性を評価する.検索方法:様々な資料から関連する論文を選び出した.電子検索データベースはMEDLINE(1966〜1996,7月),EMBASE(1980〜1996,6月),Current contents(〜1997,3月)を使い,それらから,1994年,Dickentrialらによってsubject-specificの検索語の組み合わせを用いた最適な検索式を用いて文献検索を行い,ランダム化比較試験や準ランダム化比較試験を同定した.この検索によって引き出された全ての論文の参考文献についても検索を行った.さらに論文は主な雑誌のハンドサーチや同僚との個人的なやり取りによっても検索を行った.
選択基準:思春期から中高年層における個々の身体活動における足関節靭帯損傷の予防法のランダム化または準ランダム化比較試験において足関節の捻挫の項目を含んだものを選択した.改良した履物やサポーターの使用,足関節訓練を含むトレーニング計画やケガの知識を含む健康教育などが予防法の例として挙げれられる.検索の際に言語の制限は加えなかった.
データ収集と解析:前述した選択基準に適合した論文に対して最低4人の評価者が個々独立して論文の方法の内容やデータをsubject-specificな形式を用いて詳細に検討した.考慮したアウトカムは1)足首の捻挫の頻度,2)重症度,3)他の下肢外傷の発生率,4)足関節の主観的な不安定性である.可能な範囲でアウトカムはプールし,足関節捻挫の既往歴によりサブグループに分けた.
主な結果:適格と考えられた11のランダム化比較試験のうち,5つの論文(3954人分のデータを含む)がこのレビューに採用になった.全ての研究には,若く活動的でしばしばスポーツを行うハイリスクグループに属する成人男性が含まれている.足関節のトレーニングを行うときを例外として,予防の介入方法は外側足関節補助としてsemi-rigid orthosis,air-cast braceまたはhigh top shoesを使用した.足関節外側補助を行った人々において足関節捻挫が有意に減少した(オッズ比0.49,95%信頼区間0.37〜0.66).この減少は,以前に足関節捻挫の既往のある人々において大きかったが,以前に捻挫の既往のない人にも大きい可能性がある.足関節の捻挫の程度を軽減したり,他の足関節外傷の発生率を減らすことに関しては目だった違いはなかった.'high top' shoesの予防的有効性については既に確立されている.足関節の捻挫の減少に関しては,足関節のトレーニング訓練を行った捻挫の既往のある人々に限った証拠しか見出せなかった.
結論:この研究により足関節靭帯損傷のハイリスクグループであるスポーツ愛好者たちのケガをふせぐのに,半剛体によるものやスポンジによる支えといった補強が効果があることが分かった.一昔前の捻挫にたいする知識をもつ関係者はこのような補強をすることで,将来的には捻挫を起こす危険性があるかもしれないとアドバイスされたかもしれない.しかしながら,いかなる強力な予防法であっても活動による危険のベースラインや特定の工夫に対する供給とコスト,それをすることによっておこり得る損失などなど,もろもろのことでバランスをとっている.あえて言うならば,以前の足首の捻挫がなければ,ほかの強力な予防法,これら一般的に受け入れられている予防法の調査をすることが必要になってきたとこの研究より言うことはなかっただろう.
Citation: Quinn K, Parker P, de Bie R, Rowe B, Handoll H. The prevention of ankle ligament injuries. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.
(日本語翻訳:横田恭子/河合 徹)