分娩中の臍帯圧迫に対する羊水注入

Amnioinfusion for intrapartum umbilical cord compression

Hofmeyr GJ

最終更新日:19/10/1997


目的:入手できる最良の証拠に基づいて,潜在的な臍帯圧迫あるいは臍帯圧迫の疑い,または潜在的な羊膜炎に対する羊水注入の母体と周産期の結果への効果を評価すること.

検索方法:コクラン妊娠と出産グループによって維持・更新された臨床試験のレジスター.

選択基準:組み込み基準は次の7項目を含んだ.それらは,1)羊水注入なしの対照群を用いて,臍帯圧迫または潜在的な羊膜炎に対する羊水注入が,臨床的に意義ある結果に及ぼす効果を比較した臨床試験,2)治療群と対照群への割付けの適切な秘匿,3)結果に実質的に影響する程でない割付け管理の違反,4)観察者バイアスを最小限にするためにとられた合理的手段,5)プロトコル違反に関係なく,最初の割付けに従って分析に利用できるデータ,6)不十分なデータや患者の重複のために結果に重大な影響が出ていないこと,7)分析に適した形で入手できるデータ,であった.

データ収集と解析:検討した試験は,試験結果を考慮することなく,組み込みのための方法論的質と的確性を評価された.組み込まれた試験データは次に述べる方法で処理された.Mulrow CD,Oxman AD (編) ,コクラン共同計画ハンドブック[1997年3月1日改訂].コクラン・ライブラリー[ディスクまたはCDR-OMのデータベース].コクラン共同計画発行.オックスフォード,Update Software社.1996年より3カ月毎に改訂.

主な結果:潜在的な臍帯圧迫と臍帯圧迫の疑いに対する経頚管的羊水注入は次の8項目の減少と関連していた.それらは,1)胎児の心拍数低下(相対危険率(RR)0.54,95%信頼区間(CI)0.43から0.68),2)帝王切開(RR:0.56,95%CI:0.42から0.75),3)1分のみのアプガースコアが7未満(RR:0.35,95%CI:0.23から0.53),4)臍帯血pHが7.2未満(RR:0.51,95%CI:0.35から0.74,研究間で一定しない),5)1つの研究のみでの「新生児仮死」(RR:0.32,95%CI:0.15から0.70),6)分娩後の子宮内膜炎(RR:0.45,95%CI:0.25から0.81),7)母親の入院日数が4日以上(RR:0.46,95%CI:0.29から0.74),8)新生児の入院日数が4日以上(RR:0.40,95%CI:0.26から0.62),であった.また,次の4項目は有意ではないが減少する傾向にあった.それらは,1)羊水混濁,2)鉗子吸引分娩全般,3)ハイリスク新生児室への入院,4)分娩第2期の変動一過性徐脈,であった.臍帯脱出は有意ではないが増加する傾向にあった.声帯下の胎便に対する効果は見い出せなかった.そして平均破水・娩出時間は延長した(+2.24時間,95%CI:0.50から3.98).経腹的羊水注入は,レビューした2つの小規模の研究では上記のものに類似した傾向を示した.1つの小規模の研究で,破水後6時間以上経過した女性に対する感染を予防するための経頚管的羊水注入は産褥感染の減少に関連していた.

結論:レビューされた研究の中では,胎児仮死の診断の確認のために頭皮血のサンプルを用いることに関しては何も述べられていなかった.この確認なしでも,潜在的な臍帯圧迫や臍帯圧迫の疑いに対する羊水注入は,結果として帝王切開の臨床的に重要な減少を引き起こす.臨床上の実施では,この利点は,レビューした研究ではあまりに稀なので確認できなかったが,理論的には可能性のある羊水注入の合併症より重視される必要がある.例えば頭皮血のサンプルを用いて胎児のwellbeingが確認されたとき,帝王切開が減るかどうかは分かっていない.胎児心拍数モニターだけで胎児仮死の診断をつけないという条件下での,羊水注入の効果を比較するさらなる研究が必要である.経腹的羊水注入と潜在的羊膜炎に対する羊水注入はさらなる調査をする価値がある.


Citation: Hofmeyr GJ. Amnioinfusion for intrapartum umbilical cord compression. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:益田裕子/佐藤孝道)