糖尿病性末梢神経障害の治療におけるアルド−ス還元酵素阻害剤の有効性

The efficacy of aldose reductase inhibitors in the treatment of diabetic peripheral neuropathy

Airey M, Bennett C, Nicolucci A, Williams R.

最終更新日:04/03/1992


目的:糖尿病性末梢神経障害の進行の阻止,好転,遅延におけるアルド−ス還元酵素阻害剤の有効性を評価する.

検索方法:コクラン糖尿病グループのデータベースを検索し,確認された試験と過去のレビューの引用リストを調べた.この分野で活躍していると考えられる研究者に見逃した研究を探すため接触した.

選択基準:臨床的な神経障害の有る,または無い糖尿病患者において,アルドース還元酵素阻害剤とプラセボ,無治療,または他の治療と比較したランダム化比較試験.

データ収集と解析:神経伝達速度のみがすべての試験における測定されたエンドポイントであった.治療効果は,正中神経と腓骨神経の運動神経,正中神経と腓腹神経の知覚神経の神経伝達速度の平均差について評価された.

主な結果:19試験が,4種のアルド−ス還元酵素阻害剤を4週から208週の期間(平均24週)調べており,メタ・アナリシスに含む基準を満たした.治療群では,対照群と比較した時,正中と腓骨の運動神経の神経伝達速度の低下が,少しだが統計学的有意に減少した(それぞれの加重平均 0.66m/s, 95%CI 0.18〜1.14m/sと0.53m/s, 95%CI 0.02〜1.04m/s).いずれの知覚神経でも,アルド−ス還元酵素阻害剤の明らかな有用性は,認められなかった.

結論:アルド−ス還元酵素阻害剤による治療が,運動神経の神経伝達速度の低下を減少させることが示されたが,この評価方法のこのような変化の臨床的妥当性は明確でない.より小さい知覚神経線維ではこの評価方法では効果がなかった.知覚神経の変性は,糖尿病に関連する最も一般的な神経障害(神経原性症候群)の主な原因であり,四肢の激しい痛みや感覚の喪失が時には潰瘍化や最終的には切断にもつながるのだが.


Citation: Airey M, Bennett C, Nicolucci A, Williams R.. The efficacy of aldose reductase inhibitors in the treatment of diabetic peripheral neuropathy. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:野崎香織/浅井泰博,糸矢宏志)